銀歯の値段を底上げしたのは銀(シルバー)だけのせいではない

投稿日:

3686 Gold

 

10月8日といえば
日本歯科技工士会が2005年に
創立50周年を記念して定めた日。

「い(1)れ(0)ば(8)」の
語呂合わせから来ています。

入れ歯や差し歯、被せ物をつくる
歯科技工の仕事に感謝する日、
という意味が込められています。

 

その歯科技工の現場で、
ここ数年ずっと問題になってきた
ものがあります。

それは銀歯です。

奥歯の詰め物や被せ物に使われる
あの銀色の金属ですが正式には
金銀パラジウム合金といい、歯科の世界では
金パラと呼ばれています。

 

銀色なので銀だと思われがちですが
中身は金が12%、パラジウムが20%、
銀がおよそ半分、残りが銅です。

1961年に国民皆保険が始まった頃、
安い材料として広まったもので、
これを保険で使っているのは世界でも
日本だけだといわれています。

 

この金パラには国が決めた
値段があります。

歯医者さんは材料を市場で買い
治療をすると、保険から国が決めた値段で
材料代が戻ってくる仕組みです。

そしてその値段は、直近の相場の
平均をもとに、3か月に1度見直し。

 

問題はこの3か月に1度という
決め方にありました。

相場がゆっくり動いている間は、
それで困ることがないでしょう。

ところが相場が急に上がると、
国の値段はいつも後ろから
追いかけることになります。

 

全国保険医団体連合会によると
2026年1月の時点で、金パラの
市場の値段は30gで168,300円。

一方、国が決めていた値段は
114,060円ということでした。

1g当たりで換算すると
1,808円の差です。

 

これを奥歯の被せ物1本に置きかえると
金属代だけで19,635円かかるのに、
保険から戻ってくるのは13,307円。

歯医者さんは銀歯を1本つくる度に
6,328円を自分で持ち出すことになります。

国の値段は3月に1g4,779円まで
引き上げられ、3か月で25%を超える
大きな見直しになりました。

 

それでも市場の値段には届かない、
という声が続きました。

窓口で払う患者さんの負担も
被せ物1つで1,000円前後増えたと
報じられています。

値段を決める人と、
その値段で払う人がずれると、
ずれた分は誰かがかぶることに。

銀歯の場合、それが
歯医者さんだったのでした。

 

どの貴金属が高騰したのか?

 
では、何がここまで銀歯の
値段を押し上げたのか?

その答えというのは金でなく
パラジウムでした。

 

パラジウムは、金やプラチナと同じ
貴金属の仲間ですが使われ方が
全く違うものではあります。

パラジウムの供給の8割以上は
自動車(ガソリン車)の排気ガスの
触媒として使われています。

宝飾品や投資に回る分は、
ごく僅かしかないのです。

 

しかもパラジウムは、狙って
掘ることがほとんどできません。

ロシアのニッケルや南アフリカの
プラチナを掘るときに、一緒に
出てくる副産物だからです。

年間の産出量は200トンほどで、
値段が上がったからといって、
すぐに増やせる金属ではありません。

 

過去に世界中で排ガスの規制が
厳しくなった際、パラジウムの
取り合いが起きたことがありました。

2019年10月には1,800ドル/oz、
金の値段を超えました。

そして、2022年3月には、
産出の4割を占めるロシアへの制裁で
供給の不安が重なり、3,425ドル/ozの
最高値をつけました。

 

この頃の国内のパラジウム価格は
最高値で13,000円/g台だったのですが
銀歯の値段が跳ねたのこの頃でした。

ところが、その後は急落します。

電気自動車が増えれば、
排ガスの触媒はいらなくなり
触媒の材料も、パラジウムから
値段の安いプラチナへ置き換え。

 

使い道の先行きが曇った瞬間に
値段は崩れました。

2026年10月1日の時点で、
パラジウムは6,474円/gと
金に比べて約3割程度。

 

このように使い道が
偏った金属というのは、その使い道の
未来で値段が決まります。

パラジウムの値段は、
パラジウムそのものではなく、
ガソリン車がこの先どれだけ走るか
それによって決まりました。

その見通しが変われば、
値段は上にも下にも大きく振れます。

 

ただし、金(ゴールド)は
その需要のウェイトが違います。

宝飾品や投資用、そして
中央銀行需要、工業用需要と
幅広い需要があります。

指輪を買う人、資産として持つ人、
国として蓄える人と、買い手が
いくつにも分かれているので
どれかの需要ひとつが細っても、
他の支えにより暴落しにくいのです。

 

とはいえ、もちろん、
金にも低迷期はありました。

1980年の高値のあと、
長く低迷した時期がありました。

 

店頭ではたまに金以外に
プラチナやシルバー、パラジウムに
関する質問をいただきます。

ただ、他の貴金属を考えたなら
買う前にひとつ確かめてみてください。

その貴金属はいま誰が、
何に使っているのか?

 

これをすぐ言えないなら、
その金属の値段が何で動くかも
分からないまま買うということ。

言えたなら、次はその使い道が
この先どうなりそうかを考えればよく
値段の見通しはそこから見えてきます。

貴金属はどれも値下がりする可能性は
あるワケでして、どれをどれだけ持つかは
ご自身の資産全体と投資の方向性で
決める必要があるのです。

 

 

 

本日はここまで。
ゴールド皇子こと中岡英也でした。
(名前クリックでプロフィール表示)
May the Gold be with you. 

【本日(10/8)の貴金属価格(9:30価格)】
 ゴールド:23,105円/g(-336)
 プラチナ:9,306円/g(-321)
 ※田中貴金属公表の税込小売価格
 ※2025.7.1より14:00にも価格が公表されます(平日のみ)

 

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